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2006年 10月 27日

親父が死んだ。俺は泣かなかった。

一年前、俺の親父が死んだ。

という話で泣いたと言うのが良くあるが、俺は泣かなかった。


俺は北海道で漁師をやってる。
ガキの頃から親の手伝いをして骨の髄まで漁師仕事は叩き込まれた。
すげー厳しい親父だった。
どんくらい厳しいかってもう漫画の世界。
ゲンコツなんて毎日のように食らってた。
そのゲンコツのお陰で今も美味いメシ食わして貰ってる。

その親父は6年前の冬に胃癌で死んだ。
やつれて別人みたいだったけど、中身は厳しいまんまだった。
苦しいだろうに弱音の一つも吐かねーの。
遺言は「船は任せたからな」だった。

親父が死んだってのを実感したのは船の上。
仕事始める時の馬鹿でかい掛け声が聞こえなくて「あぁ、いないんだな」って思った。
代わりに自分で叫んでみたら思いの外気持ち良くて今まで損してた気分だった。

俺は今漁師をやってる。
別に泣く事なんか何も無いよなぁ、親父。

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